2010年12月03日

エッセンシャルズ・ラインは既存のD&D4版の版上げだ/互換性がない、という誤解について

日付をまたいで変な時間になってしまったのですが、ツイッターとかメールとかメッセージとかで最近この話題を振られることが多くなったので、忘れないうちに書いておこうかと思います。

現在まだ「赤箱」以外のエッセンシャル・シリーズは、日本語版の出版予定が発表されていないため、このラインに関する情報が少なく、タイトルに書いたような誤解を持っている人が増えつつあると聞きました。

実際のところ、これは完全な誤解なのですが、あんまりこのまま、デマが広がり続けるのもナニかなーと思うので、ここらで誤解をとくための記事を書いておこうかと。

まあこれは僕がWotCの記事を読んだり、今までに英語版が発売されているエッセンシャルズ・シリーズを読んで自分なりに解釈した結果の意見なので、もちろん異論がある方もおられるとは思いますが、とりあえず。

あと、何か僕が読み間違いをやらかしている箇所があったら、御指摘いただけると助かります。


といっても、まずは断言しておきましょう。

エッセンシャルズ(D&D Essentials)シリーズの本は、『D&D4.5版』のような版上げでもなければ、既存のD&D第4版と混ぜて遊べないような、互換性のないサプリメントでもありません。


4版には発売以来、定期的にルールのアップデートがかかっていますから、現在アメリカで展開中のエッセンシャルズ・シリーズに「現時点での最新ルール」が載っているのは確かです。

しかし、基本的に既存サプリメントの該当箇所には、エッセンシャルズ展開時期に加わった新しいルール・アップデートが別途提供されます。HJのサイトにも、日本語版PHBや各種サプリメントのアップデートがもうすぐ追加されます。

また今後もD&D4版のルールにアップデートはかかるでしょうから、エッセンシャルズ・シリーズの製品に対するアップデートも徐々に追加されていくことでしょう。そういう意味で、エッセンシャルズ・ラインの本も、今までのD&D第4版サプリメントと何も変わりがないのです。

エッセンシャルズ・シリーズの本からD&D4版を始めたプレイヤーが、自分のキャラクターに既存の4版サプリメントの特技、パワー、伝説の道、神話の運命、アイテムなどを使わせることはできますし、その逆も可能です。またエッセンシャルズ・シリーズのみを使って作成したPCも、既存サプリのみを使って作ったPCも、両方を混ぜて作ったPCも、問題なく同じパーティで冒険を続けることができます。

ルール上の互換性は100%であり、最初から同じゲーム・システムの中の新データとしてバランス取りがされているため、3版→3.5版のときのように「3版サプリと3.5版を混ぜるのは危険」とか、「3版の呪文、特技、上級クラスなどを3.5版に流用するなら各DMがいちいちバランスの検討をしてハウス・ルールで対応する必要がある」といったこともありません。

ではなぜ、エッセンシャルズ・シリーズが「既存の4版と互換性がない」という誤解を受けやすいのか、私見ながらその要因には、主に以下の2点があるのではないかと考えられます。

1:既存クラスの作成オプションが、かなり大胆な作りになっている。

今までも『○○の書』系サプリメントを中心に、既存クラスの作成オプションがたくさん発表されてきました。例えばファイターならPHBの大業物ファイター、護衛型ファイターに加えて、『武勇の書』で熱闘型ファイターと烈風型ファイターが、『武勇の書II』で喧嘩屋ファイターが追加されたわけです。エッセンシャルズ・ラインの製品、たとえば『Heroes of the Fallen Lands』で追加された「Knight」と「Slayer」も、基本的にはファイターの新しい作成オプションでしかありません。ファイターであることには変わりがないため、たとえば既存サプリメントのファイター専用特技などを修得できます。

ただし、エッセンシャルズ・ラインで提示された作成オプションの一部は、クラスの基本構造自体に大胆なアレンジを加えたものとなっています。具体的に言いますと例えば上記の「Knight」や「Slayer」は1レベルの無限回攻撃パワー、遭遇毎攻撃パワー、一日毎攻撃パワーを有していないため、既存サプリメントからこれらのパワーを持って来て修得することはできません(汎用パワーは普通に修得できます。またヒューマンが既存の種族的特徴を選択し、追加で既存の1レベル無限回攻撃パワーを修得することも可能です)。

ただし今までの作成オプションにしても、たとえば特定のクラス特徴を選んでいないと意味のない特技、喧嘩屋ファイターじゃないと修得しても意味がない、片手が空いていないと使えないパワーなんかもあったわけで、既存サプリメントから流用できる内容の割合が極端に減ったとは言い難いでしょう。

特にPHB2やPHB3などのサプリメントは、それまでに存在しなかったクラスを提示したわけですから、たとえばPHBとPHB2の互換性のほうが、PHBと『Heroes of the Fallen Lands』との互換性より低かったと言っても良いかと思います。

またエッセンシャルズ・シリーズで示されたビルドのすべてが上記のような構造になっているわけではなく、たとえばウィザードやクレリックなどは、もっと今までの作成オプションに近い構造をしています。

2:『プレイヤーズ・ハンドブック』のように「これ1冊を買えばプレイヤーが始められる本」が新たに2冊出る。

PHB2とPHB3の場合、「プレイヤーズ・ハンドブック」という名前がついているものの、これらの本自体には、キャラクターを作成するためのルールや、プレイヤーとして遊ぶためのルールは記載されていませんでした。

つまりたとえば、自分の遊びたいクラス(たとえばシャーマン)が『プレイヤーズ・ハンドブックII』に載っていたとしても、そのクラスを遊びたいプレイヤーは、やはり『プレイヤーズ・ハンドブック』を入手せねばならなかったのです。同じことは既存クラスの新ビルドに関しても言えまして、たとえば「熱闘型ファイター」を遊びたいならば、最低限『プレイヤーズ・ハンドブック』と『武勇の書』が必要となります。

それに対し、エッセンシャルズ・シリーズのうち「Heroes of ...」という名前がついている2冊の本には、既存キャラクターの新作成オプションだけでなく、D&Dをプレイヤーとして遊ぶために必要なルールすべて、D&D4版のPCを作成するためのルールすべて、そしてその本に記載されているクラスを(その本に記載されている作成オプションで)作るためのルールのすべてが記載されています。

つまり「とりあえずこれ1冊を買っておけば、D&D4版をプレイヤーとして遊び、特定のクラス(と作成オプション)のキャラを30レベルまで遊ぶことができる本が、2冊増える」わけです。

D&D4版もアメリカでの発売から2年以上経ったので、新規プレイヤーのエントリー・ポイントがPHB1冊じゃなくてもいいんじゃないか。もう少し増やそうか、という商品なわけですね。

こういった「D&D第4版においてプレイヤー向け基本ルールブックとなりうる本」が増えたことが、一部で「エッセンシャルズは版変えである」という誤解をまねいたのではないのでしょうか。

断言しておきますが、そんなことはありません。エッセンシャルズ・シリーズの本はD&Dに新たなエントリー・ポイントを増やしただけなのです。

またすでにD&D4版を遊んでいるユーザーにとっても、「Heroes」本で追加された新パワーや新特技などは、自分のキャラクターを成長させたり再訓練させるときの新たなオプションを提供してくれることから、『プレイヤーズ・ハンドブックII/III』や、『○○の書』的な感覚で楽しむことのできるサプリメントとなっております。



では次に、これも一部で誤解されているらしい「今後WotCはエッセンシャルズ・シリーズに完全移行してしまうのではないかというデマ」について誤解を解いておきましょう。

実のところ、エッセンシャルズ・シリーズの製品は有限、といいますか、以下の10アイテム「しか」出ないことがすでに明言されております。


★『Dungeons and Dragons Starter Set』

日本語版
http://www.hobbyjapan.co.jp/dd/news/4th_starter/index.html

英語版
http://www.wizards.com/DnD/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/244660000

D&D4版初心者、それ以上にRPGという遊びの初心者向けに作られたオールインワンのボックス・セット。キャラクターを作成し、実際にRPGという遊びを行なうために必要なすべてのアイテムが入っています。

(プレイヤー向けルールブック、アドベンチャー(シナリオ)つきのDM向けルールブック、ダイス、戦場に使うポスター・マップ、PCやモンスターを表すトークン、D&Dで使用する多面体ダイス全種類、このボックス・セットに登場する全パワーをカード化したパワー・カード)

★『Rules Compendium』

http://www.wizards.com/DnD/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/247530000

D&Dの、アドベンチャーを自作したりセッションを行なっている途中で参照したくなる「ルール」がすべて1冊にまとまった本。キャラクター作成のためのデータやモンスターのデータなどは載っていません。

基本的な使い方としては、DMがいったんアドベンチャーを作成し終わり(あるいは既製のアドベンチャーを用意し)、プレイヤーがPCを作り終えているなら、セッションの会場に持ち込む本はこれ1冊で済む、というもの。実際に使ってみると非常に便利で、僕も最近ではセッションにでかけるとき、この1冊しか持ち歩いていません。

★『Heroes』本2冊

http://www.wizards.com/dnd/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/247520000
http://www.wizards.com/dnd/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/247510000

上記で紹介した「もう2冊のPHB」。それぞれ異なった種族やクラスが掲載されているのに加え、キャラクター作成と、プレイヤーとしてD&D第4版を遊ぶために必要なルールがすべて掲載されています。また種族はすべて今までのD&D4版商品でいったん紹介されているもの。クラスも大半は、既存のD&D4版製品で一度登場しているものの作成オプション違いのバージョンとなっています。

★『Dungeon Master's Kit』

こちらはいわば、「もう1冊のダンジョン・マスターズ・ガイド」。ただしボックス・セットです。基本的にはエッセンシャルズ・シリーズからD&D4版を集め始めたDMのための商品で、『Dungeon Master's Book』という本が入っており、それに加えて、新版のダンジョン・マスターズ・スクリーン、2つのアドベンチャー、ポスター・マップ2枚、そして追加のPC/モンスター用トークンが入っています。

★『Monster Vault』

http://www.wizards.com/dnd/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/244650000

こちらは言わば、「もう1冊のモンスター・マニュアル」。こちらもボックス・セットです。モンスター・マニュアルに相当する本である『book of monsters』に加えて、アドベンチャーと、モンスター用の追加トークンが入っています。

★『Dungeon Tiles Master Set』

http://www.wizards.com/dnd/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/198860000
http://www.wizards.com/dnd/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/214430000
http://www.wizards.com/dnd/Product.aspx?x=dnd/products/dndacc/244670000

今までにも発売され、日本でもホビー・ジャパンから販売されてきた『ダンジョン・タイルズ』の、ボックス入り詰め合わせセット。最終的に3セット発売されます。

★『Dungeons & Dragons Roleplaying Dice Set』

ようするに多面体ダイスの詰め合わせ+ダイス・バッグです。新たにD&Dを始めるプレイヤーには、ダイスが必要ですからね。


以上、エッセンシャルズ・シリーズはこの10アイテム「だけ」。しかもご覧になれば判る通り、そのうち3つはダンジョン・タイル、1つはダイスなわけですから、ルールやデータが記載されている本は6アイテムのみということになります。

そしてこれらの10アイテム(最後が12月発売の『Dungeon Tiles Master Set: The Wilderness』)が出た後には、また「エッセンシャルズ」シリーズではないD&D第4版サプリメントが発売されることは、WotCの製品カタログ・ページでも確認することができます。D&D4版というゲームは、まだまた続いて行くのです。
タグ:D&D TRPG
posted by 遊び人の伸さん at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | D&D
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